History

三方五湖の歴史

人と自然が紡いだ 三方五湖の歴史 五つの湖にまつわる物語

個性豊かな五つの湖が織りなす神秘の景勝地、三方五湖。20万年の時を超えて、淡水、汽水、海水の異なる水質を持つ奇跡の湖は、太古の縄文時代から現代まで人々の営みを見守り続けています。

浦見川

Uramigawa

水路開通にかけた
悲願の治水物語

美しい緑に囲まれ、水月湖と久々子湖を悠然と結ぶ浦見川。もとは小さな人工運河としてできたこの川が現在の形になるには、さまざまな人と自然のドラマがありました。
時は江戸時代の初め。大雨が降るたび氾濫していた湖の水は、江戸時代の寛文大地震(寛文2年:1662年)による地形の変化で海に流れなくなり、湖畔の集落は水没の危機に瀕しました。そんな事態に立ち上がったのが小浜藩の郡奉行であった行方久兵衛(なめかた きゅうべえ)です。

着工から約2年かけた大規模な工事は、川の深さと固い岩盤によって困難を極め、その過酷さは、携わった人夫らの恨み節が数え歌として残るほどでした。困り果てた行方は宇波西神社に願掛けを行ったところ、夢で「少し北側に寄せて掘れ」とのお告げを受け、その通りにルートを変えるやいなや工事が捗り、ついに川が切り拓かれました。
それまでにも先人たちが何度も挫折を繰り返した難工事は、行方の諦めない強い気持ちでついに水路開通を叶えました。今も岩肌には当時の人たちがノミとツチで掘り進めた歴史の証を見ることができます。

久々子湖

Kugushiko

海と川がとけあう
伝統継承の漁場

三方五湖の最下流に位置する久々子湖は、およそ1,500年前、日本海に通じる入江の口に砂が堆積することで生まれた汽水湖です。海と川の水が混ざり合い、まさに大自然の奇跡を感じる豊かな水を湛えます。

シジミ漁

久々子湖では古くからシジミ漁が行われてきました。ここで獲れるヤマトシジミは江戸時代には将軍への献上品にも選ばれた逸品です。その資源を守るため、専用のジョレンと小さい個体を戻す目の粗いザル状の漁具を用い「採りながら守り育てる」仕組みを確立してきました。

ぬくみ漁

湖のあちこちに見える小さな円形の囲いは、里山で集めた木の枝を束ね、魚たちの拠り所を作ることで生まれた伝統漁法「ぬくみ漁」の跡です。「柴漬け」とも呼ばれるこの漁法は、小魚や手長エビたちが枝の間に集まる習性を利用した、自然と寄り添う知恵の漁法。今も湖の生態系を守るため、地元の漁業組合が柴を沈める活動を続けています。

水月湖

Suigetsuko

地球の歴史を知ることができる
壮大な「自然のものさし」

五湖のうち最も大きい水月湖は、地球全体の歴史を解き明かす「世界標準の年代ものさし」と呼ばれています。その理由は、水月湖に眠る「年縞(ねんこう)」にあります。一年に一枚(約1mm)、地底深く堆積した層が描く特徴的な縞模様は、過去7万年の環境変動や自然災害を知ることができる貴重な歴史資料です。地球の年代を正確に測る手がかりとして、世界中が注目する奇跡の湖です。

また、古くから受け継がれる「ウナギ筒漁」も、この湖ならではの伝統漁法です。周辺には、この漁法で獲れた希少な天然ウナギを味わえる専門店が数多く営業しており、歴史ある湖の恵みを存分に楽しむことができます。

菅 湖

sugako

静けさを味わう
野鳥観察の聖地

周囲が丘陵に囲まれて、冬でも季節風の影響を受けにくい菅湖は、県内でも有数の渡り鳥の飛来地として知られています。
マガモやホシハジロなどのカモ類や、コハクチョウなど、さまざまな野鳥を観察できる好スポットとして、多くのバードウォッチャーを魅了しています。

三方湖

Mikatako

たたき網漁

自然に寄り添う
伝統漁法が息づく淡水湖

三方五湖の中で、唯一の淡水湖である三方湖。コイやフナ、タモロコ、ウナギやテナガエビなどが生息するこの湖では、冬から春にかけて昔ながらの「たたき網漁」が行われます。これは、竹の棒で水面を叩き、冬眠している魚を驚かせて網に追い込むという、人と自然の知恵が息づく伝統漁法です。
三方湖は川から運ばれた木や竹が多く沈み、曳網を行うことができないため、この独自の漁法が編み出されました。

日向湖

Hirugako

海と共に生きる
活気に満ちた漁師たちの湖

日向湖は日本海と直接つながる完全な海水湖。かつては他の4湖から独立していましたが、江戸時代中期に嵯峨隧道の開通により水月湖と結ばれました。
外海の荒波を遮る地形は、まさに「天然のいけす」。古くから豊かな漁場として栄え、現在も養殖業や釣り堀など、海と共に生きる人々の活気に満ちています。

宇波西神社(うわせじんじゃ)

Uwase Shrine

創建から続く
三方五湖とのご縁

三方五湖の周囲にある、多くの集落の氏神様である宇波西神社は、「福井県の伝説」によると、漁師が日向湖の水中から宇波西神を拾い上げ、村人たちと相談のうえで宇波西川のほとりに造営したとされています。また、古来から北陸道唯一の官幣神社とされ、鸕鷀草葺不合尊(ウガヤフキアエズノミコト)を祭神として祀っています。毎年4月8日に行われる宇波西神社例大祭では、国選択無形文化財に指定されている「王の舞」が奉納されます。